Greeting 日本3Dプリンティング矯正歯科学会・代表理事のご挨拶
代表理事 山口修二
一般社団法人日本3Dプリンティング矯正歯科学会 代表理事
近年、最先端の3Dプリンティング技術によるイノベーションの波は、世界的にみても急速に発展し広がりをみせています。矯正歯科分野において日本がこの技術革新の波に取り残されないためには世界に追随するのみならず、日本から世界に発信し、世界をリードすることも肝要です。そのためには、国内外と連携し最先端の知識や技術を吸収することは基より、日本においてもアイデアを創出・融合し、また既存の技術と結合することにより、さらなるイノベーションを生み出す必要があります。
歯科分野の3Dプリンティング技術の開発が著しく進んでいます。歯科用3Dプリンターの世界市場規模は、2021年で19億アメリカドルでしたが、2022年の32億ドルから2027年には79億ドルに達し、複合年間成長率は20.2%で成長すると予測されています。特に、アジア太平洋地域では、今後の人口増とともに歯科治療の需要が増し、歯科用3Dプリンタの市場は高い成長率で推移することが予想されています。
矯正歯科における3Dプリンティング技術の応用として、現在ではおもに樹脂系材料系、金属系材料系、セラミック材料系に分類できます。樹脂系では、矯正診断用模型や治療を予測するセットアップ模型がまず挙げらます。また、歯にブラケットを装着する際に使用する間接的接着用コア、アライナー装置等で応用が進んでいます。金属材料系では、大臼歯に装着するカスタマイズバンド、パラタルアーチ、リンガルアーチ、上顎急速拡大装置、犬歯・小臼歯・大臼歯遠心移動装置、大臼歯近心移動装置、保定装置等で利用されています。
本学会は、矯正歯科の3Dプリンティングとその関連分野の学理・技術・臨床応用の進歩普及、発展、並びに国民の口腔衛生の向上に寄与することを主な目的としています。本領域の基礎から最新の知識や技術を修得し、安心・安全な医療技術を提供するための教育、国内外の最新情報発信、および会員をはじめとする各技工所、大学、企業、研究所、関連団体等の学術的な交流の場を提供して参ります。教育活動の一つとして、認定制度を立ち上げました。学術大会参加、ポスター発表および口演、認定セミナー受講、3Dプリンターの検定試験を主な柱として、会員の皆様に幅広い発表や教育の場をご提供致します。国内唯一の3Dプリンター検定試験のユニークな導入は、3Dプリティングの基本的な知識取得の客観的かつ対外的な評価を可能とし、専門分野の垣根を越えたグローバルな連携・協力を行なう上で礎になると考えます。
近年の新たな課題として、材料をはじめ、造形データ準備、造形、後加工、検査、梱包等の製造工程の十分な安全性を確保し、製品としての一定の品質を確保し、強度、化学的な安全性を保証する必要があります。また、3Dプリンティング技術はアイデアを簡単に形にできる技術でありますが、アイデアの権利の保護が重要であります。CADソフト、矯正装置の製造工法、矯正装置のデザインと機能等のアイデアが特許により保護されている範囲で利用する必要があります。このような課題についても、学術団体として国内外の関連する機関や団体と連携し、客観的かつ公正に取り組み、本学会会員と最新の知識や情報を共有する機会を提供して参ります。
本学会事業にご賛同いただける歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士、歯学研究・教育関係者、企業関係者、歯科関連の学校に在学する学生、本事業に賛同し支援する団体や個人におかれましては、本学会の入会のご検討をお願いたします。